あらすじ
同じマンションの田中さんから、母が肉じゃがをもらってきた。
「ほんの少しだけ」と言われたそれは、どう見ても二人暮らしには多すぎる量だった。
そして私は知る。
タッパーは、空で返してはいけないらしい。
ポテトサラダを詰めて返せば、筑前煮が返ってくる。
炊き込みご飯を返せば、春巻きが返ってくる。
いつしか食卓は豊かになり、冷蔵庫は占領され、母と田中さんの“おすそ分け合戦”は激化していく。
これは、ひとつのタッパーから始まった、ささやかで面倒くさくて、少しだけあたたかいご近所戦争の記録である。