あらすじ
男爵家の長女リーネは、母亡きあと屋敷の台所で働かされてきた。妹イリスの結婚相手は、「花嫁を食う」と噂される|竜侯爵《りゅうこうしゃく》アズール。結婚式当日、イリスが逃げたため、父はリーネを花嫁馬車へ押し込む。
リーネが持ち出せたのは、母の形見の包丁三本だけ。ところが竜侯爵家で待っていたのは、花嫁を食う怪物ではなく、呪いのせいで食べ物がすべて灰になる、空腹で倒れかけた青年だった。
怖い。帰りたい。けれど、空腹の人を前にして鍋を放り出すことはできない。
リーネは包丁で黒い呪いを切り、竜侯爵の胃袋をつかむ。やがて妹と父が「本物の花嫁」の座を取り戻そうと現れるが、竜の火が選んだのは、妹の名前を借りた花嫁ではなく、自分の名で立つリーネだった。