あらすじ
伯爵令嬢レティシア・フェンネルは、名門香術師の家に生まれながら、美しい香水を作れない「匂いしか分からない無能」と笑われてきた。
婚約発表の夜、婚約者ジュリアンはレティシアの母の形見を踏み割り、異母妹セラフィナとの結婚を宣言する。だが、セラフィナが披露した香水から、レティシアは甘い花ではなく「死神の匂い」を嗅ぎ取ってしまう。
誰も信じない中、割れた香水を舐めた黒猫が突然しゃべった。
「うぇ、毒入りじゃん。三息あとに誰か倒れるぞ」
その言葉通り、広間で少年の給仕が倒れる。
レティシアは、罵声と笑いの中で初めて自分の鼻を武器にする。毒も嘘も呪いも、彼女には匂いで分かる。
そして彼女の力を見抜いたのは、王宮で禁じられた香りを追う青年リオネルだった。
捨てられた令嬢が、黒猫と王都の片隅に小さな香房を開き、王宮の呪いと自分を踏みにじった者たちをひっくり返していく物語。