あらすじ
「必要とされるなら、体なんてどうだってよかった。――あの夜、彼に拾われるまでは」
11歳の夏、唯一の居場所だった叔父に裏切られ、心と体に消えない「傷」を負った亜美菜。以来、彼女にとっての愛とは「相手の機嫌を取るための対価」でしかなかった。家にも学校にも居場所のない彼女は、19歳になるまで、見知らぬ男たちに自分を切り売りする空虚な日々を重ねていく。
一方、建設会社で働く30代の佐伯は、かつて誠実さを尽くした恋人に「あんたの真面目さが息苦しい」と冷酷に突き放された「痛み」を抱えていた。それ以来、誰とも深く関わらず、一人で淡々と生きることを選んでいた。
そんな二人が出会ったのは、ホテル街の片隅。
ひどく乱暴され、気を失いかけながらも「ごめんなさい」と謝り続ける亜美菜を、佐伯は無視することができなかった。
不器用な男が作る、温かい味噌汁と不揃いの佃煮。
「抱かないの?」と自虐的に笑う亜美菜に、佐伯は静かに告げる。
「お前にそんな価値、感じねぇ」
それは、彼女が初めて受け取った「消費されないための拒絶」だった。
自分を「物」としてしか扱えなかった女と、自分の「正しさ」に絶望した男。
真逆の痛みを抱えた二人が出会うとき、歪な過去を書き換える「愛の方程式」が解き明かされていく――。