あらすじ
「市民生活部,未完了係を命ずる」
春から市役所職員になった朝倉澪に下された辞令は,聞いたこともない部署への配属だった.
未完了係.
それは,亡くなった人や,事情があって最後まで果たせなくなった人の“やり残した仕事”を,可能な範囲で引き継ぐための係だった.
最初の依頼は,時計職人が亡くなる直前まで気にしていた,保育園の古い壁掛け時計の修理.
続いて届くのは,宛先の分からない手紙,そして閉店する喫茶店からの奇妙な相談.
どうして,そんなことまで市役所がやるのか.
これは本当に,仕事と呼べるのか.
戸惑う澪の前で,止まっていた時計が動き出し,届かないはずの言葉が誰かのもとへ渡り,閉じるはずの店に最後の灯りがともる.
終われなかった仕事は,誰かに引き継がれたとき,ほんの少しだけ未来へ進む.
新人職員・朝倉澪が,春の町で出会う,未完了な人々の物語.