あらすじ

都心の老舗ホテル「白鶴館」で八年カウンターに立ち続ける白川颯、三十歳。地味で口下手だが客の名前と要望を絶対に忘れない。彼が独自に書き続ける手書きの「ヒストリーノート」は誰にも評価されない。同僚の宮地翔は颯の業務を「時代遅れの根性論」と陰で笑い、手柄だけを取っていく。 ある暴風雪の夜。常連客との別れ。深夜のロビーに紫の瞳の客。白川の意識は裏返り、目覚めた先は中世風の王国の客間だった。 「迎賓記録係」として召喚された彼が王宮で出会うのは、図書館に籠もる第三王女レイアナと老司書ハロルド。そして王宮の地下深くに眠る古文書「世界のヒストリー」。神々が魂の流転を綴る帳簿。 やがて隣国オルタリア帝国から特使が到着する。その先頭に立つ若き帝国魔導書係官カンディオ・ヴィエルクの正体は、転生してきた宮地翔だった。彼は世界のヒストリーを書き換え、自身の理想の世界を創ろうとしていた。 ハロルドの死。レイアナの拉致。颯はただ一冊の手書きノートを胸に敵地へ向かう。彼が地球で八年間書き続けた二百三十六名のお客様の名前と顔。それが世界のヒストリーを修復する唯一の鍵だった。 地味な業務の積み重ねが、別世界で世界を救う物語。

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カクヨム
カクヨム2026/05/05
  • 現在の作品顧客履歴(ヒストリー) ──三十歳フロントクラーク世界の客台帳を綴る──