あらすじ
清泉県の静かな港町・翠松町。
そこには、理(ことわり)を重んじ、情を尊ぶ一軒のレストランがある。茶寮酒膳『箸と匙』。
一見、穏やかなこの店に集うのは、驚くべき「二つの貌(かお)」を持つ者たちだった。
「飲食部門の神」と称された伝説の元総支配人。
経営と技術、二つの頂点に立つ孤高の天才パティシエ。
銀色の瞳に、物理法則を捻じ曲げる力を秘めた若き店主。新人アルバイトの沙藤燈子もまた、今どきの若者には珍しい古風な名に、万象を操る「魔法」と継承の秘密を隠していた。
一流の職人たちが、その至高の技術(スキル)を一皿の料理に注ぎ込むのは、単なる味のためではない。
それは、訪れる客たちの傷ついた記憶を結び直し、人生を再び「凪(なぎ)」へと導くための祈り。
「もてなしの本質とは、お客様と自分、その間に流れる究極の一呼吸を共有すること」美食の香りと琥珀色の光に包まれ、隠された魔法がそっと指先で弾けるとき、ちぎれた運命が再び結ばれる――。
これは、美しきプロフェッショナルたちが贈る、再起と救済の物語。