あらすじ
しまなみ海道の小さな運送会社「潮継ぎ当日便」の看板には、
こう書かれている。「今日でなければ意味がないものしか受けない」――。
東京で即配サービスの配車オペレーターをしていた相馬紬は、
二週間前にこの土地へ流れてきた。
朝の合奏に間に合わせる楽器の部品。
雨の朝に運ぶ濡らしてはならない試作品。
婚礼の支度室で母から娘へ渡される古い髪飾り。
欠航日の青い糸。
橋の風、渡しの昼休み、島の地理と人の癖。
毎回違う最短経路のなかで、紬は受託基準を自分の手で書き直していく。
やがて紬は、伯方島の先の橋筋にだけ
青鉛筆を引けない自分に気づく――。
瀬戸内の海風と、運ぶことの倫理。連作十話。