あらすじ
「知らなくても先に行ける」時代に、あえて「遠回り」を選ぶ老技術者の物語。
元システムエンジニアの主人公は、最新のAIやデジタル機器を使いこなす「孫」の世代に対し、言葉にできない疎外感を抱いていた。
かつてケーブルの束と格闘し、ミリ単位の光軸調整に敗北してきた自分。
そんな彼が、かつての遺物(ヴィンテージ機材)と最新のCMOSカメラを組み合わせ、ある「実験的なライブ配信」を計画する。
舞台は、長野県小川村。漆黒の闇。
狙うのは、1500光年の彼方にある白鳥座のデネブ。
バイノーラル録音された古い柱時計の打刻音、そして「赤と青のズレ」が作り出す立体視(アナグリフ)。
一見、孫への対抗心から始まった天体配信はやがて、観測者自身の「認識の壁」を突き破る、狂気じみた思索へと加速していく。