あらすじ
時は五代十国、乱世の只中。
呉越国の首都・杭州に、父王の宮殿を飲み込む大火が起きた。
十三歳の太子・銭弘佐は、炎の海を前に静かに微笑んだ。
父の豪奢な欲望が焼き尽くされていく様を、恐れではなく清々しさと共に眺めていた。
炎の中、異母弟・弘倧を守りながら逃げる弘佐の前に、
金色の髪と碧い瞳を持つ美しい少女が現れる。
彼女の名は香霄——金木犀の精霊。
少女は不思議な力で彼らを救い、幼い日の約束を思い出させる。
「あなたが私に、玉牡丹より良いものをくれると約束した日を、待っている」
大火の後、街は焦土と絶望に包まれた。
民の苦しみを目の当たりにした弘佐は、弟と共に誓う。
「戦いも飢えもない、この世の楽園を、必ず作ってみせる」
しかしその直後、弘佐は謎の黒い影に拉致される。
父王の陰謀か、それとも別の暗殺の企てか——。
縄を断ち、追手から逃れる弘佐を、再び香霄が導く。
重傷を負いながらも必死に生き延びる少年の前に、今度は漆黒の長髪の異国人・晁衡が現れ、彼を船へと連れ去る。
炎の夢、精霊の少女、運命の約束、そして少年の野望——。
十四歳の少年王となるべき者が、
その運命の序章で見た「夢」とは、何を予兆するのか。