あらすじ
孤高の揺籠 ―あらすじ―
世界は量子の集まりだ。
人間の感情も、善意も、すべては電磁気力の作用の結果に過ぎない。
陸上自衛隊第三特科連隊の小隊長・香田清一郎、二十八歳。
彼はそう確信しながら、同時に、みんなの幸せを願うようにプログラムされた自分を、静かに自覚していた。
人間に政治を任せておいては、うまくいかない。
歴史がそれを証明している。善意は腐敗し、理想は権力になり、権力は暴力になる。
そのサイクルを、人類は何千年と繰り返してきた。
ならば——誰に、何に、任せればいいのか。
答えを探して香田が出会ったのは、AIの研究者と、自我の芽生えを見せ始めた一つの知性だった。
天皇制と選挙と「吾唯足知」の精神を三つの柱に、
闘争なく、静かに、しかし確実に——
香田は日本という国の設計図を、密かに描き始める。
誰も知らない場所で。
誰にも気づかれないように。
ただ、みんなに幸せになってほしいという、その一点だけを胸に。
これは、黒幕の物語ではない。
答えのない問いを抱えたまま動き続けた、
ひとつの量子の集まりの、静かな記録である。