あらすじ
「我は魔王である」
――頭の中で、うるさい。
畑を耕して銅貨3枚。夕飯は芋か雑草。
そんな生活を送る少年ユウは、ある日、教会の地下室で“魔王”を名乗る声と出会ってしまう。
世界を滅ぼしかけた存在。
神々に討たれたはずの絶対的悪。
……のはずなのに。
「で、夕飯どうするのだ?」
「それ今いちばん大事なやつだから」
なぜか会話が成立してしまった。
恐怖も、絶望も、世界征服も――
全部、日常の中にそのまま居座る。
しかもこの魔王、やたら喋る。
征服を語り、支配を説き、たまに寂しそうに黙る。
一方ユウは、
お金が欲しくてたまらないのに、
なぜかそれを全部まともに受け取らない。
家族はいつも通りで、
妹は笑って、母は現実を突きつけ、
祖母はなぜか少しだけ知っている。
――これは、
恐怖で終わるはずだった存在と、
会話をやめない少年の、
少しだけおかしくて、少しだけあたたかい、
終わらない日常の物語。