あらすじ
冒険者の街グレイム。その路地裏に、可愛らしい看板を掲げた小さな店『どんぐり金庫』はある。店主を務めるのは、二十歳にしては幼さの残る顔立ちの女性、アルテ。一見すればギルドの受付嬢のような彼女だが、その正体は、街で一目置かれる「金貸し」だ。
しかし、彼女が貸し出すのはただの金ではない。
「鉄兜を脱ぐな。それはお前の命の値段だ」
「死にたくなければ、まずは罠の掛け方を覚えなさい」
彼女の融資には、時に厳しい「条件」がつく。
彼女の正体は、かつて若くして頂点に登り詰めた「元Aランク冒険者」。酸いも甘いも噛み分け、死線の向こう側を見てきた彼女にとって、金貸しとは債務者を野垂れ死にさせないための、最も冷酷で慈悲深い「育成」の手段だった。
そして、アルテが路地裏で未熟な命を拾い上げている頃、かつてのパーティの仲間たちもまた、彼女と同じ「冒険者の命を救う」という信念を抱き、それぞれの路を歩んでいた。
神官は、商人として各地を飛び回り、莫大な資金を動かす。
魔術師は、理想の魔法薬生産拠点を立ち上げるべく、最高峰の調合師を求めて旅に出る。
戦士は、若き芽を戦場で散らせぬよう、冒険者訓練校の設立に奔走する。
金貸し、商人、生産者、そして教育者――。
彼らが再び集結し、その力が一つに重なったとき。停滞していた冒険者の世界は、未だかつてない「次の段階」へとかけ登っていく。