あらすじ
事故で命を落とした「私」がたどり着いたのは、第十四並行小宇宙——グレイブンと呼ばれる冥界だった。第十三並行小宇宙から少し離れた小宇宙。
そこは、扉を開けば「会いたい人」に会える世界。
ばあちゃんの暮らす丹波の古民家から始まり、龍馬や義経に会える世界。
歴史に名を残した人物たちの「部屋」を訪ねていく世界が始まる。
だが、この物語は、
戦いや英雄譚を描くものではない。
語られるのは、教科書には残らなかった感情や、その瞬間に背負った「決断」の重さだ。
龍馬はなぜ、あれほど自由でいられたのか。
義経は、追われた末に何を求めたのか。
フビライ・ハンは、日本との戦いをどう見ていたのか。
清水宗治は、六千人の命と引き換えに何を思ったのか。
冥界では、彼らはもう戦わない。
勝ち負けも、評価も、正解もない。
あるのは、語り残した言葉と、それでも受け入れた選択だけだ。
冥界は不思議なほど穏やかで、思ったよりもにぎやかだった。
英雄も、偉人も、祖母も、
皆同じように縁側に腰を下ろし、責任を下ろして対話する。
これは、歴史の世界を舞台にした幻想譚であり、歴史上の人物たちと語らう対話の記録でり、
そして——
「人は、どんな選択して生きてきたのか」
を静かに見つめ直す物語である。
扉を開けるたびに、
歴史は少しだけ人間に戻る。
冥界で、ちょっと歴史に会いに行く。