あらすじ
八重橋晃は五十手前のフリーター。難関理系大学を卒業しながらも非正規雇用の独身で、両親と同居する日々を送っていた。学生時代に「相田教室の四バカ」と呼ばれ、宇宙船を造ってファーストコンタクトを果たすという夢を抱いた仲間たち——玩具オタクの半場瓦、介護士の沢渡、マンション管理人の歌志内——も、今はそれぞれの現実に飲み込まれていた。ある日、世界中に謎の電波メッセージが届く。アルファ・ケンタウリ方向からの信号を解析した四人は、それが単なる挨拶ではなく、遠い星の知的生命体からのSOSであることを突き止める。メッセージには、宿主の遺伝子を破壊する致死的なウイルス分子式が隠されていた。相田教授の助力と国際的な極秘プロジェクトにより、四人は老朽化したロシア製モジュール「Zvezda」を改修した宇宙船「アルゴー二世」に乗り込む。
三十年越しの夢を現実のものとするため、負け組中年四人は冥王星軌道の先、未知のワームホールへと旅立った。無重力の苦痛、国際クルーとの軋轢、老いた身体の限界——数々の困難を乗り越え、彼らはワクチンを搭載したポッドをワームホールに射出する。
結果、アルファ・ケンタウリの危機は回避された。三年四ヶ月後、四人は地球に帰還する。
世界は彼らを一時的に英雄として称賛したが、熱狂はすぐに薄れた。
半場瓦はゲームセンターに戻り、沢渡は介護の現場へ、歌志内は同人誌を商業出版し、晃は旅先で出会ったイギリス人科学者スーザンと結婚した。派手な英雄譚ではなく、ただ「遅すぎた夢を叶えた」四人。
彼らは再び、それぞれの日常へと帰っていく。しかし、夜空を見上げる彼らの瞳には、確かに三十年前の輝きが蘇っていた。——氷河期世代の負け組中年たちが、世界の果てで宇宙を救った、静かで、ちょっと間抜けで、けれども確かに尊い物語。