あらすじ
薬草と毒の知識だけが取り柄の、地味な女子高生・花森このは(はなもり このは)。十七年間、誰にも気づかれないまま生きてきた。ある雨の夜、突然の事故でこの世を去り、気づけば転生先は——異世界の花京国(かきょうこく)後宮、その片隅にある薬草庫だった。言葉が通じる。なぜか体は以前よりずっと動く。そして前世の薬学の知識は、丸ごと頭の中に残っている。途方に暮れているわずかな間に、このはの前に現れたのは、感情のない黒い瞳を持つ第三王子・凜夜(りんや)。
「後宮で、人が死んでいる。毒殺だ。お前には、謎を解く役に立ってもらう」
そう告げた彼の目に、ほんの少しだけ——温度があった気がした。薬師見習いという名目で後宮に放り込まれたこのは。料理に仕込まれた毒、美しい妃の正体、王子が隠している秘密——謎が謎を呼ぶ後宮の奥で、このはの「知識」は静かに輝きはじめる。毒を知っている女と、心に毒を持つ王子の、甘くて苦い謎解き物語。