あらすじ
深夜零時を過ぎると、古びたアトリエの機能が変わる。
ドアをノックする者は、叶えたい願いを、消したい後悔を、誰かへの憎しみを抱えた人間だけだ。アトリエの主「守人」は感情を持たず、ただ淡々と取引を行う。夜の絵具、夜の粘土、夜の刃物。それらを使えば、現実の因果をわずかに曲げることができる。記憶を塗り替え、運命の糸を断ち、命の時間を引き伸ばす。
ただし、必ず等価交換が発生する。
代償は常に予測不能で、使った者の一部を静かに奪っていく。感情を。創造意欲を。大切な人間関係を。愛した記憶を。
来訪者たちはそれぞれの執着を持ってアトリエへ辿り着き、願いを叶え、そして自分をさらに壊して去っていく。守人はただ見ている。見ているうちに、守人自身の中で、動くはずのないものが少しずつ動き始める。
感情を持たない存在が、感情を取り戻すとき。その代償は、何になるのか。
現代日本を舞台にした、静かで重い幻想小説。救いは薄く、希望はほとんどない。それでも最後のページを読み終えたとき、あなたは棚の瓶のことを、しばらく忘れられないだろう。