あらすじ
「その男の神棚には、マリア像の隣にシヴァ神が座り、日本の八百万の神々が茶を飲んでいる」
インドネシア、スラバヤ。
混沌とした熱気と最新のビル群が入り混じるこの街に、一人の日本人男性とマドゥラの魔女の血を引く男、優一・ササントがいた。
彼は伝説の陰陽師・慎一の息子でありながら、誰からも術を教わらなかった。
独学で父の「陰陽術」と母の「黒魔術(サンセット)」を混ぜ合わせ、さらにはアジアの深淵なる「道(タオ)」の奥義を極めた彼は、いつしか世界中の異能者から畏怖を込めてこう呼ばれるようになる。
――「神の生まれ変わり」と。
その噂は海を越え、ついにはバチカン市国をも動かす。
カトリック教会の「悪魔払い(エクソシスト)部門」が匙を投げた怪事件。
言葉の通じぬ西洋の悪魔を、優一は特製の蚊取り線香の煙と、多神教の圧倒的な包容力で「掃除」して見せた。
しかし、そんな「世界の救世主」の私生活は、波乱万丈の問題児。
サリの血を引く気の強い美女アユを、前彼氏から力技(ガッツ)で奪い取り、三人の子供たちを育てながら、日々家の中に迷い込む霊をハエ叩きのごとく追い払う「スラバヤの肝っ玉親父」でもあった。
サンセット(呪術)の雨を跳ね返し、祟られた権力者を叱り飛ばし、バチカンの神父と酒を酌み交わす。
物語は、自身の子供たちに霊感がないことを憂う優一が、甥っ子・幸一の中に、かつての自分をも凌駕する「神のポテンシャル」を見出した時から、新たな運命の歯車を回し始める。
これは、一族の血を繋ぐ「愛」と、世界を救う「優しさ」の、奇跡と笑いの継承録。