あらすじ
現役USラッパー、Lil Ace。アトランタ出身、SoundCloudフォロワー数百万人。金も名声も全て手に入れたその男が、高層ビルのベランダから落下して死んだ。享年二十五歳。呆気ない幕切れだった。
そんな彼は気がついたら、異世界にいた。
ここは歌と魔法が全てを支配する世界――”アルカディア”。歌の上手さがそのまま魔力となる世界だ。人々は歌と楽器で魔法を操り、モンスターと戦い、国の誇りをかけて覇を競う。そんな世界でLil Aceが手に入れたのは、特殊スキル「ラップ」。既存の魔法歌理論では説明がつかない、前代未聞の力だった。
この世界には五つの大国が存在する。
大地の声を歌う民謡民族の連合――フォークの里。
闘争心と向上心に溢れるバンド国家――ロック連邦。
即興と自由を謳うジャズ国家――シンコペ王国。
楽譜と秩序に全てを委ねるオーケストラ国家――シンフォニア帝国。
そして神への祈りを音に捧げる聖歌国家――グリゴレム聖教国。
この五大国は年に一度、「五国覇詠戦」を開催する。
優勝者には莫大な賞金が贈られる。それを知ったLil Aceは即決した。理由はシンプル。金が好きだからだ。
相棒となったのは、歌も楽器も下手くそな少女シオン。
しかし彼女にはビートメーカーとしての才能があった。
その手が生み出すビートは、Lil Aceのラップと化学反応を起こし、世界の常識を根底から覆す。
帝国最強のオーケストラパーティーすら、彼らの前に沈んだ。
しかしこの世界には、五大国よりも深刻な脅威が存在していた。
美しい歌声とメロディを憎み、喰らう”モンスター”。
長年対立してきた五大国は、共通の敵を前に否応なく連帯を迫られていく。
果たして本当の敵は、モンスターなのか。それとも――もっと別の何かが、この世界の裏に潜んでいるのか。
マイク一本で異世界を切り開く、転生ラッパーの物語が今、始まる。