あらすじ
仕事も人生もうまくいかず、自分を「クズ」と呼ぶ青年・舟木柊。
スポーツ用品店での単調な日々、理不尽な叱責、未来への希望のなさ。
そんな彼の心を十年間縛り続けているのは、高校時代に事故で亡くなった最愛の恋人・片桐美羽の記憶だった。
クリスマスイブの夜、酒に溺れ、死を意識した柊は意識を失う。
次に目を覚ますと、そこには――死んだはずの美羽がいた。
しかも日は、彼女が亡くなる前日の十二月二十三日。
これは奇跡か、幻か、それとも――。
「今度こそ彼女を救う」
過去の記憶を持ったまま高校時代へ“戻った”柊は、二度と失わないと心に誓い、美羽との一日を生き直す。
しかし、どれほど幸福な時間を重ねても、運命は静かに牙を剥く。
やがて明かされる真実――
美羽はすでに死んでおり、この再会は「救済」ではなく「別れ」のために用意された時間だった。
「柊は生きて。絵を描いて。私を、記憶の中で生かして」
彼女の最後の願いは、柊の人生を再び動かす。
絶望しかなかった青年は、喪失と後悔を抱えながらも、絵を描くことで前に進むことを選ぶ。
――十年後。
画家となった柊の代表作には、涙を浮かべながら微笑む一人の女性が描かれていた。
これは、失われた恋が“生きる理由”へと変わった、切なくも温かな再生の物語。