あらすじ
喜怒哀楽、愛情、恐怖――あらゆる「感情」が売買される管理社会。
人々は負の感情を手放し、安らぎを買うことで平穏を保っていた。
元政府・感情管理局の査定官だった男、神谷。
ある"バグ"を隠蔽した罪で追放された彼は、今は横浜の闇市場でブローカーとして生きている。
感情に値をつけ、取引をまとめ、感情を持たないように装いながら。
そんな神谷のもとに、一人の客が現れる。
「感情を、すべて売りたい」
だがその人物には、最初から"何か"が欠けていた。
売るべき感情が、そもそも存在しないかのように。
そしてほぼ同じ頃、神谷はまったく逆の存在と出会う。
すべての感情を一つも手放さず生きる少女――「完全体」と呼ばれる、制度の例外。
なぜ欠けているのか。
なぜ持ちすぎているのか。
そして、なぜ今この二人が自分の前に現れたのか。
神谷は、消せない感情を胸に隠したまま、歪んだ世界の裏側へと踏み込んでいく。
「心」を切り売りする社会で、最後まで残るものは――果たして何か。