あらすじ
侯爵家の令嬢エステルは、魔力が少なく、加護も弱いことから「無能令嬢」と蔑まれて育った。
姉は華やかな攻撃魔法、妹は希少な治癒加護を授かり、社交界でも家の中でも、エステルだけが出来損ないとして扱われている。
けれど彼女には、誰にも理解されていない才能があった。
それは、魔道具――とくに杖の芯材と魔力の流れを見極め、使い手に壊れない形で馴染ませる力。
普通の杖は、大きすぎる魔力を流し込めばすぐ砕ける。
どれほど高価な名杖でも、英雄級の魔力に長く耐えられるものは存在しない。
だからこそ、強すぎる魔法使いほど、最後には杖を使い捨てるしかなかった。
だが、エステルの作る杖だけは違う。
彼女の杖だけが、英雄の奔流のような魔力を受け止め、砕けず、焼けず、歪まない。
無能と呼ばれた令嬢は、戦えない。
けれど彼女の作る一本だけが、国を守る英雄の全力に耐えられる。
これは、誰にも評価されなかった少女が、
自分の仕事で静かに世界の中心へ届いていく物語。