あらすじ
東北の春。高校二年生の瑠璃は、死者の魂を彼岸へ送る「送り人」顕定と出会う。
絵の才能を持ちながらも、母親に否定され続けた瑠璃は、すでに絵を描くことを辞める決意をしていた。
放課後、桜の下で死者を送り続ける顕定の凛とした姿に惹かれ、瑠璃は彼のもとへ通うようになる。
死者の想いが、生者へと受け継がれていく
光景に触れる中で、瑠璃は見えない繋がりと、顕定が背負ってきた役目の重さを知る。
会話をする中で、顕定は瑠璃の迷いを見抜き、「才能を否定された程度で筆を置くのは、自分への裏切りだ」と突き放す。あまりに重い言葉に、瑠璃は一度はその場から逃げ出してしまう。
突き放されて当然だと自分を責める瑠璃は、不思議な夢を通じて、顕定の壮絶な過去を知る。彼はかつては武士で、主君である鞠姫の最期を守れず、その辞世の句すら届けることができなかった武士であった。その強烈な「悔い」が彼を縛り、桜の木の下で「送り人」として立ち続けさせていたのだ。
やがて、桜の木の寿命が尽き、顕定が消滅する時がくる。瑠璃は顕定の「お前に、忠を尽くせ」という言葉を胸に、母の呪縛を断ち切る決意をする。自分が自分を裏切らないために、誰に否定されても描き続けることを誓う。
顕定が消えてしまう最後の日、瑠璃は彼の願いである「海」へ向かう。自転車の荷台に彼を乗せて走り出す。姫が望んだ生活が、民に届いていることを確認できて、顕定は喜ぶ。辿り着いた海辺で、瑠璃は自分の姿を鏡で見ることのできない顕定の姿を、スケッチブックで見せる。顕定は殻を破った瑠璃の姿に満足げな笑みを浮かべ、顕定は一本の若木へと姿を変えて消滅する。
その別れから十三年。画家になった瑠璃は、今も心の中に根を張る顕定の言葉を糧に、自分自身の「忠」を描き続けていく。