あらすじ
春先、差出人不明の怪メールが出回った。
内容に曰く、
――武技、術技ニ能フ者。術師、剣客、喧嘩屋、稼ギ屋、之何レモ問ワズ。
七月一日、白刃川ノ地ニテ千両ヲ与フ依頼アリ。
この文書が、大勢の人生を大きく変えることになる――。
神仏妖怪、人獣とが存在し、息づき、共に暮す和深大陸。
長い戦乱の時代が終わり、天下泰平の時代を謳歌したのもつかの間。
流出した「特殊な作刀技術」と「妖術の秘伝」によって、凶悪犯罪が増加しつつある現代――。
刃鉄の血継――戦乱の世において、一族に伝わる「特殊な刀剣」と「比翼の血縁」を結んだ異能の「侍」たち。
彼らにとっての〝抜刀〟とは、すなわち戦術兵器として攻撃を実行することを意味していた。
理由もなく鯉口を切る行為さえ、固く戒められている――。
そんな刃鉄の血継である玄塚燈真は、ある出来事がきっかけでひどく落ちぶれた暮らしを送っていた。
故郷の里を離れ、東部の町で稼ぎ屋をやって、どうにか糊口をしのぐ日々。
幼馴染の死、親友の失踪、想いを寄せていた女性の出奔。
しかし燈真はあるとき、その女性――同じく|刃鉄《はがね》の血継《けっけい》で、妖狐の一族である稲尾椿姫と再会する。
彼女もまた数年前の出来事がきっかけで稼ぎ屋に身を窶し、何も失わないだけの強さを手に入れんと武者修行に励んでいた。
彼女が街に訪れた理由は、春先にばらまかれた謎のメールを巡る騒ぎであった。
彼女はここに集う「武技、術技ニ能フ者」を斬り伏せ、天下無双に近づかんと息巻く。
そして燈真は、この騒ぎに失踪した親友が関与していることを知り、「刀」を差し、千両の報酬が出るという謎の依頼に挑む。
その依頼とは、果たして、所在不明の「宝珠探し」――であった。
そして報酬は、最後まで依頼に残っていた連中で山分けというもの。しかしこれが理由で、参加者同士の間で血で血を洗う闘争が繰り広げられることになるのだった。