あらすじ
退職した王立裁判所第三法廷記録官グンネル・ヴァト、六十二歳。
北部の自宅で、彼女は十二夜にわたって古い裁判記録を一人で書き直している。三十二年の勤務で立ち会った、四十一件の重い判決。
そのうち十一件で、彼女は判決文の余白に書けなかった真実を抱え続けてきた。
毒殺未遂とされた薬師令嬢、王子に剣を向けた剣士、敵国に通じたとされた翻訳者――判決の言葉と、彼女が記録席から見ていたものは、いつも食い違っていた。
十二夜目、最後の綴りに彼女が書くのは、誰の事件でもなく、自分自身の選択の記録である。北方の沈黙の修道院から届いた一通の手紙が、彼女に書く意味を初めて与える。