あらすじ

大学三年の夏。 “見えてしまう”体質を持つNは、イギリスの大学へ進んだ幼なじみ・ビーに誘われ、英国の郊外を訪れる。 自然豊かな美しい田舎町。 アンティークに満ちた古い家。 ビーの大学の友人たちとの出会い。 そして、二人で手に入れた、お揃いの銀のチャーム。 甘く穏やかな夏休みになるはずだった。 だが、ビーの友人・ケイトと出会った瞬間から、Nには見えてしまう。 彼女の肩にまとわりつく、黒い靄。 やがてNは、死者の記憶と生者の嫉妬が混ざり合った悪夢に引きずり込まれていく。 教会の葬儀。 隠し撮りされたビーの写真。 鋏で切り裂かれる笑顔。 そして夜、見えない“女の手”が、眠るビーの首を絞める――。 それは死者の呪いか。 それとも、生きた人間の強すぎる執着か。 これは、感情の残滓に触れてしまう私が、 唯一の「帰る場所」である彼女を守ろうとした。 英国の夏の怪異譚。 ホラー×心理怪異×幼なじみ百合×異国情緒 甘いキスのぬくもりと、首筋に残る手の痕が交錯する、 ひと夏の回想録。 登場人物紹介 N(エヌ) 本作の語り手。大学三年生。 父方の家系の女性に多い霊感体質を受け継ぎ、物に残った感情や記憶を読み取ったり、他人の視点で過去や悪意の夢を見せられたりする特異体質を持つ。 長身で中性的な雰囲気を持ち、運動神経抜群。子どもの頃から護身術の道場に通っている。冷静で落ち着いて見えるが、実際は他人の痛みを真正面から受け止めてしまう不器用な優しさの持ち主。 幼なじみのビーに長年恋をしており、互いの気持ちには気づいているものの、正式に告白はしていない。 それでも高校二年の夏に初めてキスをして以来、時折抑えきれない想いのまま、甘い口づけを交わしている。 ビー(Bea) Nの幼なじみで、日英ハーフの美少女。 深いブロンドの髪と緑の瞳を持ち、穏やかで柔らかな空気をまとっている。イギリスの大学に通っており、この時期は父方の叔母のもとに下宿中。 怪異そのものは見えないが、Nの危うさや無理を誰よりも敏感に察することができる。 Nに対してはとても積極的で、スキンシップもキスもためらわない。甘く寄り添うだけでなく、ときに驚くほど真っ直ぐに踏み込んでくる強さを持つ。 Nにとって唯一無二の「帰る場所」。 ケント ビーの大学で同じセミナーに所属する男子学生。 爽やかで気さく、しかも紳士的な優等生。恋人のリジーとはとても仲が良い。 日常的にビーからNの話を聞かされているため、二人の関係性や想いにはかなり早い段階で気づいている。 英国紳士的な軽やかなユーモアがあり、どこかスチュアートにも似た気配を持つ。 リジー ビーやケントと同じ大学に通う女子学生。 穏やかで親切、面倒見のよい性格で、初対面のNにも優しく接する。 ケント同様、Nとビーの間に流れる特別な空気を自然に見抜いている。 賑やかな仲間たちの中では、場をやわらかく整える存在。 マギー&メグ ビーの友人たち。 明るくにぎやかな“観測者”コンビで、人の感情や関係性の機微に妙に敏い。 Nとビーの距離感を見て、のちに「尊い」と言い出しそうなタイプ。 場を明るくする一方で、思っている以上に人をよく見ている。 ケイト ビーたちの友人の一人。 日本文化に興味があり、Nにも親しげに接してくる女子学生。 しかしその視線や言葉には、なぜかビーに向けた刺のような違和感が混じる。 彼女の肩にまとわりつく黒い靄が、この夏の怪異の入口となる。 カナ Nの現実側の切り込み役。 新聞部のエースで、軽口と行動力、そして鋭すぎる観察眼を持つ。 怪異を直接見ることはできないが、噂や断片的な情報の裏にある共通点を見抜き、真相へ最短距離で迫る。 Nにとっては、“こちら側”から事態を整理してくれる数少ない存在の一人。 スチュアート ビーの父で、英国文学者。 誠実で理性的な学者でありながら、理屈では割り切れない現象にも静かに理解を示す人物。 いつも紅茶と英国式ジョークを忘れない、典型的な英国紳士。 Nとビーの想いに昔から気づいており、Nのことを冗談めかして「娘のナイト」と呼ぶ。 マリア&マリコ Nの大学の友人たち。 明るく賑やかなムードメーカーでありながら、人間関係の“温度”には妙に敏感。 Nとビーの空気をかなり早い段階で察している、日本側の観測者コンビ。 重い出来事のあとも、日常へ引き戻してくれる大事な存在。 タクト Nの従兄弟。 気さくで頼りがいがあり、怪異とは無縁の側からNを支えてくれる人。 異常の中でも“普通”を保ってくれる存在で、Nにとって安心の象徴でもある。 ハジメ・シュウジ・ユウタ Nの幼なじみたち。 怪異の事情は詳しく知らないが、それでも確かにNを日常へつなぎ止めている存在。 彼らの変わらない距離感や軽口が、Nに「まだこちら側へ帰れる」と思わせてくれる。 ポン酢 ビーの愛犬。フレンチブルドッグの雄。 空気を読まず、遠慮もなく、良くも悪くもすべてをぶち壊す最強の癒やし。 だが、その無邪気さに何度も救われる。 怪異にも恋の空気にも容赦なく突っ込んでくる、愛すべき破壊神。

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カクヨム
カクヨム2026/04/08
  • 現在の作品Nの回想録 夏の英国、銀のチャームと夢に潜る手