あらすじ

名門医家・沈家に生まれながら、霊力も医仙印も持たない沈静鈴は、声が小さく人前に立つのも苦手な「役立たず」として薬録房に追いやられていた。 妹・玉蘭が金位の医仙印を授かった日、静鈴は婚約を解消され、西境の僻地・黒沙県へ送られる。 だが静鈴には、誰にも言えない記憶があった。前世で外科医だった知識と、沈家の失敗記録を読み続けて得た観察眼。さらに彼女は、霊力こそないものの、人の気脈の濁りを見ることができた。 天医術が傷を塞ぎ、痛みを祓う世界で、静鈴は知っている。塞がった傷が治ったとは限らない。腹の奥で血が溜まり、膿が残り、骨が歪んだまま癒えれば、人は静かに壊れていく。 黒沙県に着いた夜、若き県令・李嵐が刺客に斬られる。術者たちが手を尽くしても止まらない内出血を前に、静鈴は震える手で針を取る。 「患者です。切ります」 薬鴉・墨児の穢れ除けの中、静鈴は魔法ではなく縫合と止血で李嵐を救う。やがて県衙裏の古い倉は「裏薬房」と呼ばれ、都の天医に見放された患者たちが集まり始める。沈家を追われた無紋の医女は、黒沙県で初めて、自分の小さな声を必要とされていく。

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小説を読もう2026/04/08
  • 現在の作品黒沙県裏薬房