あらすじ

民俗学を学ぶ大学院生・音無千秋は、指導教員の桐島とともに、変わらない不思議な街を調査するため訪れる。高速道路を降りると、コンビニやチェーン店、見慣れた看板が消え、田んぼと低い屋根の家屋、曲がりくねった道が広がる。時間の流れが止まったような景色に、千秋は懐かしさを感じ、息を深く吸い込む。新築やリフォームの痕跡がなく、すべてが「あるがまま」に存在する街並みが印象的だ。  街を歩くと、手入れの行き届いた道や建物が目立つが、スマホやテレビ、ラジオを使う人はいない。住人に声をかけると「特に困りません」と穏やかに答える。縁側で出会った老婆・ふじは「世界が終わるときから守っているんです」と笑う。役場で戸籍を調べると、江戸時代から同じ名前、職業、家族構成が何世紀も繰り返されており、異常さに気づく。  夜、千秋は一人で資料館に忍び込む。棚には人間の一生を網羅した書物が並び、「怒り方実例集」「泣き方場面別」などの感情の記録も。奥の古い引き出しから「人類文明完全復元計画」の文書を発見。街は世界崩壊後のバックアップとして機能し、住人が同一役割・知識を世代を超えて継承し、外来者に親切に接するよう指示されていることがわかる。一度目の崩壊後、再起動された可能性も示唆される。  外で待っていたふじは計画を知りながら、「ここで生まれて笑い、誰かを見送る人生は本物」と語る。翌朝、桐島は何も語らず荷造りを済ませ街を去る。現代の景色が戻る車中、千秋は書庫の古い紙と木の匂いを胸に刻む。

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エブリスタ2026/04/07
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