あらすじ
福岡市内、早良区。
かつて社(やしろ)があったという赤土の分譲地。
接地工事――それは、余剰な電気を地面に逃がす「道」を作る地味な作業。
だが、地中深く打ち込んだアース棒は、電源のないはずの場所から奇妙な拍動を拾い上げる。
1.2V……3.5V……8.0V……。
テスターが示すのは、逃げ場を失った迷走電流か。
それとも、泥の底で呼吸を続ける「誰か」の執着か。
「……落ちろ」
真っ黒な炭素粉で塗りつぶし、全体重で踏み固める。
不純物を絶縁し、回路を沈黙させたはずの男。
その指先が、なぜ微かに震えているのか。
――これは、愛ではない。ただのノイズだ。
(著:位相 朔)