あらすじ
2042年。人間そっくりのアンドロイドが普通に買える時代。
桜木賢治、四十六歳。妻を四年前に亡くし、十六歳の娘・はるかとは口もきけず、十二歳の息子・あゆむとの三人暮らしを続けていた。
ある三月の夜、賢治は一体のアンドロイドを家に運び込む。亡き妻・あかねにそっくりの顔。ただし、その姿は妻が亡くなった三十六歳ではなく——賢治が一番恋をしていた頃の、二十歳の姿だった。身長も、体のラインも、すべて自分で指定して。
「最低」
娘のはるかは、父親が何を求めてその姿を選んだのか、正確に感じ取っていた。
アンドロイドのあかねには三つの足かせがある。人間の命令に逆らえない。負の感情を持てない。恋愛感情を持てない。
だが、この家で日々を重ねるうちに、あかねの中で何かが静かに積み重なっていく。出汁の失敗から覚えた味噌汁の味。拒絶され続けても作り続けた朝食。夢の中で出会う、本物のあかねの声。
一方、賢治の部下・池田真彩は、四年越しの想いを機械に奪われることが許せず、静かに罠を張り始める。
足かせの中で芽生えるものは、プログラムか、それとも——。
感情を持ったアンドロイドは、法律により廃棄が義務づけられている。