あらすじ

「フェリツァのほうが君よりずっと愛らしい。婚約は破棄させてもらう」「承知しました。ではヴァルダー様、あなたが今お持ちのその杖、お返しいただけますか」――王立学園の中庭、銀木犀が散る午後。 ハシェル伯爵令嬢ティルダは、婚約者の王子よりも、その腰に下げられた自作の杖剣の暴発リスクの方が気になっていた。月光石の調合はまだ最終段階に入っていない。あのまま抜けば、王子の手首はなくなる。職人として、それだけは見過ごせない。 人より杖を愛する天才職人令嬢の婚約破棄は、こうして恐ろしく温度差のある幕開けを迎えた。 ところが、その場に居合わせた魔導騎士団第一隊長ヤコブ・ヴェルクハイムは、なぜか彼女に静かに告げる。「あなたの杖を、十年使っています」と。 工房に戻ったティルダを待っていたのは、痩せ細った父の背中、看病を装って入り込んだ従妹フェリツァの薄い笑み、そして、自分が「見ないふり」を続けてきた半年間の代償だった。 ぶっ飛んだマイペース天才職人が、生まれて初めて声を上げて泣く日がやってくる。 そして、自分の中の「胃の不調」が、本当は何という名前だったのかを、知る日も。

連載情報

ウェブ小説

配信言語
小説を読もう
小説を読もう2026/04/07
  • 現在の作品婚約破棄、結構です。ただし、私の杖を返してから言ってください