あらすじ
西暦2089年。日本は「推し活民主主義」を導入した。
国家予算の配分を、国民全員の「推し投票」で決める。推されれば予算が増え、推されなければ予算が消える。教育、医療、防衛、宇宙開発——全省庁が「推し」を獲得するためにアイドルのように広報する時代。
文部科学省はVTuberを起用。防衛省はコスプレ自衛官でバズり、厚生労働省は「年金ちゃん」のゆるキャラで若年層を掴んだ。
——で、国土交通省は。
省内の推しポイントは道路と橋に全部持っていかれ、下水道には一票も回ってこない。
主人公・津田真一、36歳。下水道課の広報担当。予算がないのでたった3人で全業務を回している。
「推される努力が足りない」と課長に言われたので、SNSで叫んだ。
「下水道のない世界で推し活できますか? トイレが壊れた会場で、ペンライト振れますか?」
——インフラは「推されない」から価値がある。
当たり前が当たり前でなくなった時——街は、臭くなる。