あらすじ
『便利屋・九条の解決できない恋事情 ―依頼人は、僕を殺したはずの初恋相手でした―』
解けないものが、ひとつだけある
証拠を集めれば、真実は形になる
嘘は綻び、矛盾は必ず露わになる
どんな謎も、やがては終わりに辿り着く
けれど
君の言葉だけは
あの日のまま、ほどけない
「好きだった」と
確かに聞いたはずなのに
どうしてそれが、終わりの合図になったのか
僕はすべてを失って
名前も、居場所も、過去さえも捨てて
それでも、たったひとつだけ残ったものがある
君だ
忘れられないわけじゃない
忘れることを、許されなかっただけだ
君は言う
「私のせいで、あなたは――」
違う、と言えなかった
真実は、いつだって優しくない
だから僕は、黙っていた
便利屋としてなら、なんでも解決できる
誰かの嘘も、誰かの罪も
きれいに終わらせることができる
なのに
君の前では、どうしても推理が狂う
距離を測るはずの視線が
触れないように伸ばした手が
全部、間違っている気がする
君はまだ、知らない
あの日の真実も
僕が消えた理由も
そして
今も、君を選び続けていることも
依頼は、ひとつでいい
どうか
この気持ちの答えを、見つけてほしい
――僕にはきっと、一生かかっても解けないから