あらすじ
速水修平は、人の発する声や言葉に敏感すぎるあまり、人付き合いが苦手だった。
コミュ障で陰キャな彼だが、高校2年生のときに春がくる。お淑やかな優等生、小山内美鈴に恋をしたのだ。
速水と美鈴はクラスメートで、昨年から図書委員で見知った仲だった。
ある春の放課後。図書室で野球の練習風景を眺めていた速水に美鈴がいった。
「次の土曜日、両親がいないんです。部屋に来てくれませんか?」
意中の子からの誘いに興奮し、ふしだらな妄想をする速水。
だが、当日。彼女に連れられて部屋に入ると、稲妻に打たれた。
そこには優勝候補の金満球団、電撃ライダーズのグッズが並んでいたからだ。
美鈴は、過去に速水が別の球団のキャップ帽をつけていることを目にしており、野球が趣味だと把握し、一緒にデーゲームを見ようとしたのだ。
速水の心境は複雑だ。野球観戦は好きだが、いかんせん美鈴の応援球団は好きではない。
なし崩しに試合を見始めると、彼女の別の一面が現れる。それは野球に関わるときだけ多重人格になるというものだった。
美鈴の人格は、実の姉であるスバルとオッサン二人が存在していた。
試合中、速水はヤジを飛ばす美鈴たちと打ち解けていく。だが、彼女らと接するうちに違和感に気づく。多重人格の美鈴だが、スバルという人物だけは、両親を安心させるために作った偽の人格だった。
試合が終了し、スバルの人格を問い詰める速水。
図星だった美鈴は「速水くんのこと大嫌いです」と拒絶するも、胸の内では両親に騙し続けている自分が辛いことを吐露する。
速水は失恋に傷つきながら「両親もきっとわかってくれるよ」と説得し、美鈴の枷を解いた。美鈴は初めての理解者に心を許し「今度は球場で試合を見たいです」と誘い、速水は内心喜ぶ。
彼の初恋は一歩進んだのだ。