あらすじ

『ジョイの仮面 ―トウキョー・ポケセン連続殺人―』

明るすぎる場所には、
影が落ちないと思っていた

笑い声は高く弾み
色とりどりの光が床を撫でる

甘いポップコーンの匂い
小さな手のぬくもり
名前を呼ぶ声

――すべてが優しかったはずなのに

 

あなたは、そこにいた

群衆の中で
ただ一人
こちらを見続ける「視線」として

 

優しさは、
ときどき形を間違える

差し出した手は
いつの間にか捕まれるためのものになり

名前を呼ぶ声は
逃げ場を塞ぐ鎖になる

 

「守ってあげる」

その言葉は
どうしてこんなにも
息ができなくなるほど重いのだろう

 

白い制服
やわらかな笑顔
ジョイの仮面の下で

何人分の恐怖を
飲み込んできたのか

 

ぬいぐるみは笑ったまま
カードはきらきら光ったまま

世界は壊れているのに
“楽園”だけが、壊れないふりをする

 

あなたは言う

「純粋に戻してあげる」

 

それは救いではなく
ただの消去だった

 

名前を奪い
関係を断ち
世界ごと閉じ込める

 

――それでも

 

私は知ってしまった

 

光は、
誰のものでもないことを

優しさは、
奪われるためにあるのではないことを

 

だから私は

その仮面を外す

 

笑顔のままでは
救えないものがあると知ったから

 

明るすぎる場所の奥で
確かに息をしていた闇に

私は、名前をつける

 

それがきっと

「戻る」じゃなく
「進む」ということだから

 

そしてまた

あの場所に
子どもたちの声が満ちる頃

 

誰も知らないまま

新しい影が
静かに
笑っている

連載情報

ウェブ小説

配信言語
アルファポリス
アルファポリス2026/04/07
  • 現在の作品『ジョイの仮面 ―トウキョー・ポケセン連続殺人―』