あらすじ
「戦う」「強くなる」という疑問を持ちながら、1991年4月、主人公の「ぼく」は、仙台から大阪の大学に入学し、大阪という異文化や大学に溶け込めないまま、キックボクシングをやることで、「戦い」の意味と、大阪の人たちと、その時代と向き合うことになった。
時は格闘技が広く社会に受け入れられる「K1ブーム」前夜で、格闘技が粗雑な人間のスポーツだった時代。入門したシュートボクシングの道場で、ハゲタカのような塾長やスターダムに駆け上がる海堂や黙々とサンドバッグを蹴り続ける鮫山、同じ大学のニシダらと交わりながら、「ぼく」は強くなっていく。
「戦い」の気分にのせられながら、友人の死に遭遇し、新たな友人に出会いながらも、試合は負け続ける。そして、塾長の資金集めの要望に応え、学生40人以上を集め大学での同好会を結成。シュートボクシング界も格闘技ブームに乗ろうと試行錯誤するが、ブームの火付け役となった正道会館が進化していくのに対応できず低迷。ぼくも負けがこんでくると強くなる目的はますますかすみ始める。
強くなることってなんだろう。ある男「ブルース」との出会いで、ぼくは混乱する。彼が口にするのは「ブルーの感覚」。やがてぼくはそのイメージに引き寄せられ、自分が「戦い」の気分の中で大阪の淀んだ風景に同化していくのに気付く。まわりにいた人も消えていき、ぼくの居場所がなくなっていく。正道会館がK1グランプリを成功させた日、海堂は別の試合で正道会館の選手に負け、夢やぶれた。そしてぼくもブルースが示した符号の一致に気づく。
自己体験を基本に、戦う、強くなるという根本原理や「集団的自衛権」の本質も念頭に、当時の格闘技状況をノンフィクションで再現した青春小説。