あらすじ
十数年ぶりにイギリスを訪れたNと、幼なじみで恋人のビー。
友人夫妻の赤ん坊の誕生を祝う、穏やかな再会の旅になるはずだった。
だが、Nは“知らない誰かの目”で現実を視る夢を見る。
その夢に現れたのは、弟を傷つけそうになる少年エドと、彼を操る不気味な声だった。
古いアンティーク店で手にした銀のスプーン。
父から渡された数々のお守り。
そして、何があっても自分を現実へ引き戻そうとするビーの手。
悪魔のようなものに取り憑かれた少年を救う夜を越えた先で、Nはようやく、自分が何を守りたいのかを言葉にする。
これは、見えないものと対峙しながら、
愛する人と生きる未来を選び取る物語。
登場人物紹介
N
本作の主人公。三十代の女性。
長身で中性的な雰囲気を持ち、護身術の鍛錬を積んでいる。
人ならざるものの気配や、他人の視点に入り込むような夢を見る体質。
普段は落ち着いているが、守るべきもののためには危険も顧みない。
無自覚に“王子様”めいた言動をするため、ビーによく振り回される。
ビー
Nの幼なじみであり恋人。英国出身。
ブロンドの髪とグリーンの瞳を持つ、美しく知的な女性。
大学で教鞭を執る研究者でもあり、冷静で現実的。
一方でNには甘く、彼女が危うい領域へ踏み込みそうになると、触れることで現実へ繋ぎ止めようとする。
Nにとっての“帰る場所”そのもの。
エド
ケントとリジーの長男。八歳。
弟思いの優しい少年だが、弟の誕生後から“やれという声”に苦しめられる。
弟を傷つけたくないのに止められないという恐怖を、ひとりで抱えていた。
セオ
ケントとリジーの次男。生まれたばかりの赤ん坊。
物語の中で、守られるべき無垢な命の象徴として描かれる。
ケント
ビーの大学時代の友人。快活で気のいい人物。
家族を守りたい一心で、説明のつかない出来事に向き合っている。
リジー
ケントの妻。穏やかで芯の強い女性。
息子エドの異変に心を痛めながらも、家族を支え続けてきた。
スチュアート教授
ビーの父。
英国紳士らしい軽妙なユーモアと、娘を深く思う温かさを併せ持つ人物。
Nを「娘のナイト」と呼び、半ば家族のように迎え入れている。
マギー/メグ
ビーたちの友人。
Nとビーの関係を昔から面白がりつつ、誰よりも祝福している賑やかな存在。