あらすじ
現代日本の記憶を持ったまま転生した先は、戦国時代の大内晴持。
しかし彼は知っていた――本来の歴史では、自分は第一次月山富田城の戦いの退却途中で命を落とし、大内家もまた内側から崩れていく運命にあることを。
だが、生き延びてしまった以上、歴史は「変わった」のではない。
壊れたのだ。
そう理解した晴持が選んだのは、天下を取ることでも、英雄になることでもなかった。
織田信長とも戦わず、毛利氏とも争わず、ただ大内家という“戻る場所”を残すこと。
最も信頼できる補佐役である毛利隆元とともに、
晴持は戦ではなく、会話と立ち居振る舞いによって西国を整えていく。
京での織田信長との会席――
そこは刀も軍勢もなく、食事と酒、そして言葉だけで価値観を測り合う場だった。
壊す者と、残す者。
戦国の世で、「戦わない」という選択は成立するのか。
これは、歴史を大きく変えない代わりに、
壊れきる前の世界を静かに支え続けた、一人の殿の物語である。