あらすじ
あらすじ
見えてはいけないものが見える少女は、あの夏、“首を狙うもの”と“恋”に出会った。
高校二年のNは、父方の家系にだけ現れる特異体質を持っていた。
見えないものが見え、聞こえないものが聞こえ、場所や物に残った記憶の断片さえ流れ込んでくる。さらに彼女は、知らない誰かの視点で“夢”を見る力まで抱えていた。
ある日、新聞部の友人カナに連れられて訪れた弓道場で、Nは“氷の君”と呼ばれる弓道部のエース・ミコトと出会う。感情を表に出さない美しい彼女は、的の傍らに現れた黒い異形を、まるで見えていたかのように矢で射抜いた。
その日を境に、Nは不穏な夢を見るようになる。壊された祠、森に満ちる悪意、そして“首を狙われる”感覚――。
やがて学校では、弓道部の先輩を巻き込んだ怪異が現実となって牙を剥く。
危険を顧みず人を救おうとするN。静かな強さで怪異に立ち向かうミコト。騒がしくも頼れる友人カナ。そして誰よりも近くでNを支え続ける、幼なじみのビー。
恐ろしく、痛く、息苦しい怪異の夏。
その中でNは少しずつ知っていく。人を現実につなぎ止めるのは、祓いやお札だけではないのだと。誰かが本気で心配してくれること、そばにいてくれること、触れるたび胸をかき乱すまっすぐな想いこそが、自分を救ってくれるのだと。
これは、怪異に首を狙われた少女が、
静かな友情と、不器用な優しさと、幼なじみへの恋に気づいていく――
ひと夏の青春オカルト百合小説。
主な登場人物
N(主人公)
高校二年生。長身で運動神経が良く、中性的な雰囲気から“王子みたい”と言われることもある少女。
父方の家系に伝わる霊感体質を持ち、見えないものや残留思念、そして他人の視点の夢を見てしまう。祖母に鍛えられているため肝は据わっているが、恋愛方面にはとことん鈍くてヘタレ。困っている人を見過ごせない性格。
ビー(Bea)
Nの幼なじみで、日英ハーフの美少女。深みのあるブロンドと、光によって色を変えるグリーンの瞳を持つ。
身体が弱かった過去を持つが、頭脳明晰で芯が強く、Nの体質もまるごと受け入れている数少ない存在。昔からNへの距離感が近すぎるが、それは幼なじみだからでは済まないレベル。甘くまっすぐで、時にずるいほど愛情表現が巧み。
ミコト
弓道部のエースで、由緒ある神社の娘。文武両道で感情をあまり表に出さないことから、陰で“氷の君”と呼ばれている。
高い霊感を持ち、怪異への対処にも長けているが、自分を“冷たい”と評するほど不器用。だが実際は他人をよく見ていて、優しく責任感が強い。Nにとって、怪異に立ち向かううえで欠かせない存在になっていく。
カナ
新聞部のエースで、明るく押しが強いNの友人。
文章力も取材力も抜群だが、好奇心が旺盛すぎてNを怪異絡みの現場へ連れていく張本人でもある。場を動かすムードメーカーであり、重くなりがちな物語の中で軽快なリズムを生む存在。霊感持ちではないが、Nやミコトを信じて支える大事な友人。
ユキジ先輩
弓道部の有望な先輩。成績優秀で生徒会役員も務める優等生。
周囲の期待と重圧に追い詰められた末、怪異に取り憑かれる。物語の中盤で起きる事件の中心人物であり、“首を狙うもの”の恐ろしさを現実に引き寄せる存在。
アヤノ
華やかで恋愛遍歴の絶えない同級生。
軽率な人間関係の積み重ねが、生き霊騒ぎを引き起こしてミコトに相談を持ち込む。短い登場ながら、人の感情の重さや、怪異が日常と地続きであることを印象づける役割を担う。