あらすじ
作品タイトル
回復の途中、きみと過ごす静かな春
■あらすじ
パンデミックの最前線で働いていた看護師・Nは、数年後、心と身体のバランスを崩し、訪問看護師として働きながら“回復の途中”にいた。
音に敏感になり、集中力を失い、食事さえ義務になる日々。
仕事をセーブしながら実家へ戻った彼女を待っていたのは、
鹿が現れるほどの田舎の風景と、少し騒がしく、どこか優しい日常だった。
春。
人が前へ進んでいく気配に、置いていかれたような感覚を抱えながら過ごすN。
そんな中、幼なじみで親友のBea(ビー)が帰国する。
変わらない距離感で抱きしめてくる彼女の存在は、壊れかけていたNの心を少しずつほどいていく。
桜の下で過ごす穏やかな時間。
何気ない会話。
膝枕のぬくもり。
そして――
「ただの幼なじみ」ではいられない感情に、ようやく気づく春。
静かな田舎の縁側で、時々クッションを投げつけながら。
やたらと家に出入りする従兄弟や、よく喋る母と寡黙な父に囲まれながら。
これは、
止まってしまった時間を、もう一度ゆっくり動かしていく物語。
そして、
“回復の途中”にあるふたりの、少し遅れた恋のはじまり。
■登場人物
■N(私)
30代前半・独身・看護師(精神科訪問看護)
パンデミック期に過酷な現場で働き続けた結果、適応障害を発症。
現在は仕事をセーブしながら、実家で療養と日常を行き来している。
中性的な雰囲気で長身、もともとスポーツ万能で体力には自信あり。
だが現在は「頭では分かっているのに身体が動かない」状態に悩む。
音に敏感で常にイヤホンを装備。食事はほぼ作業。
しかし本来は世話焼きで、無自覚に“ナイトムーブ”を発動しがち。
恋愛に関しては致命的に鈍いが、ある春の日、ついに気づいてしまう。
気づいた瞬間、行動が早すぎて自分でも引くタイプ。
■Bea(ビー)
30代前半・日英ハーフ・研究者
幼少期にイギリスから引っ越してきたNの幼なじみで親友。
現在は海外の大学で研究職に就いていたが、日本の大学のオファーを受け帰国。
深いブロンドと緑の瞳を持つ美人で、穏やかで優しいが芯はかなり強い。
昔から体が弱く、よく寝込んでいたが、その頃からNとの絆は深い。
距離感が近く、ハグやスキンシップが自然。
Nの異変には誰よりも敏感で、遠慮なく甘やかし、時に叱る。
実はかなり前からNの気持ちに気づいていた節があり、
「遅い」と言いつつもちゃんと待っていたタイプ。
■タクト
30代前半・独身・自称「何でも屋」
Nの従兄弟で近所に住む。なぜか頻繁にNの実家に出没する。
帰宅すると「おーっす、お帰りー」と自然に迎える準家族ポジション。
元自衛隊・戦車部隊という謎にハイスペックな経歴を持つが、
公務員試験前夜に桃鉄を徹夜でやるなど、全体的に信用度が低い。
Nの状態を理解しているが、あえて何も言わない。
代わりにどうでもいい話と絶妙なタイミングの茶化しを投げてくる。
観察力は高く、Nとビーの関係の変化にもいち早く気づく。
なお、クッションはよく投げつけられる。
■母
よく喋る。とにかく喋る。
家庭内の情報と空気の9割を担う存在。
ビーの帰国にテンションが上がり、料理の量が増えるタイプ。
Nのことを心配しつつも、過度に踏み込まず日常で包み込む。
■父
寡黙。必要最低限しか喋らない。
だが家族の様子はちゃんと見ている。
発言数は少ないが、たまに核心を突く。レアキャラ。
■祖母
90代。耳が遠く、会話はほぼ成立しない。
だが絶妙なタイミングでズレた一言を挟み、空気を変える存在。
家の中に「時間の層」を持ち込む役割。
■スチュアート(ビーの父)
英国紳士そのもの。大学教授。常に紅茶を携帯。
軽妙なジョークと観察眼で、すべてを“見抜いている風”に振る舞う。
Nのことを昔から「娘のナイト」と呼び続けている。
恋の進展を面白がるタイプの大人。