あらすじ
①あらすじ
戦が終わって十五年。雪深い北方では、帳簿の上では届いたはずの毛布も薬も、なぜか現場にない。王都兵站局の若き兵站官オーバネは、納品書の紙質や印章のずれから不正を見抜いた結果、北方第三補給拠点へ左遷される。
そこで彼女が目にしたのは、十四年前に自分が救援を待ちながら凍えた夜と、よく似た光景だった。
相手は、北方領主館、王都兵站局次官、御用商会がつないだ横流しの仕組み。けれどオーバネは剣を抜かない。納品書、通信記録、在庫表、焼印、現場の足跡を武器に、雪国で本当に命をつなぐ物資連絡網を組み上げていく。
そんな彼女の前に現れるのが、北方最速の飛脚ルトボ。善意のまま走り回って彼女の計画表をかき乱す厄介者だが、彼だけはオーバネの切実さを見抜いていた。
刀ではなく納品書で王国を救う兵站令嬢と、彼女の隣を走る飛脚が挑む、雪国お仕事恋愛ファンタジー。
②登場人物の紹介
オーバネ――北方の没落準男爵家の次女。王都兵站局に勤める二十二歳の兵站官。机上の計算だけでなく、運ぶ人の体力や雪道の遅れまで読み切る。冷たく見えても、誰より「間に合わせる」ことに執着している。
ルトボ――北方一帯を駆ける二十四歳の飛脚。頼まれていない救助までしてしまうほど放っておけない性分。計画通りに動くのは苦手だが、困っている人のいる場所を嗅ぎ当てる勘は鋭い。
ルフィナ――王都監査院の若き監査官。証拠が揃えば相手が上級貴族でも容赦しない。厳しい物言いの奥に、法で命を守ろうとする強い芯を持つ。
フルレット――第三補給拠点の荷揚げ場と警備を束ねる女性隊長。現場を知る者として、最初はオーバネに反発するが、やがて共に戦う頼れる仲間となる。
ティファニー――かつて名を馳せた剣豪。今は北方の学舎で教える教師。届かなかった薬と食料が人を殺す現実を見て、刀を置いた過去を持つ。