あらすじ
人間の形をして、
人間の言葉を話し、
人間のように微笑む“誰か”。
名前も、性別も、年齢も曖昧なまま、
ただ静かに、淡々と、周囲の“揺れ”を観察し続ける存在――××さん。
優しさは完璧。
穏やかさも完璧。
だが、そのどれにも“温度”がない。
白石由衣は、その優しさに怯え、
黒川慎吾は、その無表情な善良さに背を向け、
佐伯玲奈は、その空白の奥に潜む“何か”を見抜こうとする。
そして、周囲が恐れ、距離を置き、気づき始める中で、
××さんだけが静かに満足していた。
――人間は、揺れる。
その揺れを見ることが、何より興味深い。
最後まで正体を明かさない“善良な怪物”の物語。
優しさの仮面の下にあるのは、心ではなく、ただの空洞。
それでも、今日も完璧な笑顔で世界を観察し続ける。
読後に残るのは、
「人間らしさとは何か」という問いと、
背筋を撫でるような静かな恐怖。