あらすじ
「昔はコンビニ行って自分でレジするって考えたことなかったよね」
古河光里《こがみつり》はレジの端末にスマホをかざすと、軽やかな音を立てて決済を終えた。
コンビニを出てスマホをカバンにしまい、代わりに先程購入した商品を取り出す。
「写真部ってもっとごついカメラ使うんだと思ってた」
「みんなはそんな感じだよ。私が変なだけ」
「変じゃなくて、好きなんだろ」
「そういう変換できるとこいいよね、北村《きたむら》くんは」
にっこりと笑った彼女の目元に開封したばかりの使い捨てカメラが重なった。長方形の中央に配置されたレンズがコンビニの入口に向けられる。
カチ、と小さな音が聞こえた。
「コンビニとか撮るんだ」
「このコンビニもずっとあるかわかんないからね。カフェとか牛丼屋になっちゃうかもしれないし」
あはは、と明るい笑い声を上げながら使い捨てカメラの歯車を回す。ジー、と音がしてフィルムが巻き上げられる。
それからわざとらしく咳ばらいをひとつして、彼女はひらりと小さなカメラを掲げた。
「じゃあ本日の部活動をはじめますか」