あらすじ

記憶を失った男が「天候の公園」で幼い娘・トレイシーと再会するところから物語は動き出す。導かれるまま足を踏み入れた「私の美術館」は、進むごとにトレイシーが急成長し、展示された絵画が男の忌まわしい過去を突きつける異様な空間だった。第一章では娼婦の息子として虐げられた幼少期を、第二章では少年兵として血に塗れた青年期を、男は突きつけられる。第三章で思春期となったトレイシーに拒絶された男は、かつての共犯者であり腐れ縁の女・マリアと合流。第四章、最愛の少女「エミリー」を描いた未完成の絵の前で、謎の少年が男の罪を糾弾するが、トレイシーは少年を射殺し、自らも炎に包まれ消滅してしまった。  男とマリアは、棺と断頭台が立ち並ぶ回廊を抜け、迫りくる洪水を逃れて屋上へと駆け上がる。しかし、出口の扉に仕掛けられた糸によって、男の首は無慈悲に跳ね飛ばされた。死を免れた男は「頭部だけの状態」でマリアと軽口を叩き合い、空飛ぶ一角獣を仕留めて食糧にすると、山羊を燃料、羊を乗員とする奇怪な蒸気機関車を乗っ取る。その車内、機関助手の子羊の手によって、男の首は再び胴体へと縫い合わされた。  列車を降りた先は、二足歩行の魚たちが闊歩する商店街「魚の楽園」であった。男は道中で盗んだ金と、道連れにした子羊を「食材」としてレストランに持ち込む。かつての記憶は依然として曖昧なままだが、男はマリアと共に、追っ手たちが老いさらばうまでの八十年ほどをこの場所でやり過ごすことを決める。二人は、こんがりと焼き上がった子羊の肉に舌鼓を打ちながら、不条理に満ちた日常を謳歌し始めるのであった。

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カクヨム
カクヨム2026/04/05
  • 現在の作品「種の意地」より「エミリーに贈る」のための習作