あらすじ
社畜の田中、二十八歳。過労死した。
目を覚ますと、大好きだったゲーム『ざまぁ勇者』のラスボスに転生していた。右の拳は血まみれ。足元には殴り倒されたヒロインが倒れている。
俺が何十回もぶっ倒して「ざまぁ」と笑ってきた、全プレイヤーに嫌われている最低のクズ。その体の中に、俺は入っていた。
好感度マイナス1000。四人のヒロイン全員に憎まれている。一ヶ月後には勇者が来て殺される運命。
ざまぁされて当然だ。この体がしてきたことを思えば、むしろ甘いくらいだ。
だから断罪は受け入れる。その代わり、残された一ヶ月で全力を尽くす。殺した両親を蘇らせる。焼いた村を建て直す。奪った日常を返す。許されなくていい。ただ、この子たちに少しでも笑ってほしい。
服を買った。一緒にご飯を食べた。名前で呼んだ。殴らなかった。鎖を広げた。新しい家を用意した。当たり前のことを、一つずつ積み重ねた。
少しずつ、四人の凍りついた心が溶け始める。
そして勇者が来た。奴隷は解放された。四人のヒロインは自由になり、勇者のもとへ行った。これでいい。これが正しいルートだ。
でも勇者は、四人のヒロインの話を聞かなかった。名前を覚えなかった。「助けてやった」と恩を着せた。
四人のヒロインは気づく。
本当に自分たちを見ていたのは、誰だったのか。本当に名前を呼んでくれたのは、誰だったのか。
四人のヒロインは自分の足で歩いて、俺のもとへ帰ってくる。
「また奴隷にしたのか」と勇者は言った。
「違う。自分で選んだ」と四人のヒロインは答えた。