あらすじ
私はリシェル。この国の王女なんだって。
でも――王女がどんなものかは、よく知らない。
部屋から出たことは一度もない。
毎日、食べて、眠って、本を読むだけ。
“さみしい”も、“たいくつ”も、わからない。
それが普通だと思っていた。
――あの日、彼が来るまでは。
王宮が騒がしい日、部屋に現れたのは知らない青年。
「……こんな生活は、辛くはないのですか?」
「……? つらいって、なに?」
はじめて誰かと話した。
はじめて、胸がぽかぽかした。
「……それは、“嬉しい”という気持ちだと思います」
――“うれしい”。
彼が教えてくれたその言葉で、私の世界は色づきはじめる。
こうして始まったのは、彼と二人だけの秘密の生活。
何も知らなかった私に、彼はたくさんの“感情”を教えてくれる。
だけど――どうしてだろう。
彼がときどき見せる、あの苦しそうな顔の理由を、私はまだ知らない。
これは、感情を知らなかった王女が“しあわせ”を知っていく物語。
そして同時に、ひとりの青年が“愛”に狂っていく物語。
たとえその形が歪んでいたとしても――
それでも、確かに“愛”だった。
※メリバエンドです。人を選びます。