あらすじ
「電話を待たないといけないんだ」
そう言ってすべてを拒絶する僕に、彼女は泣きながら笑って言った。
「わたし、身代わりでもいいよ。いつか、好きになってくれるなら」
僕は、笑わない女性・陽子さんの真似をして生きてきた。
彼女になりたかった。彼女を忘れないために、彼女の話し方、考え方、愛したレコード……そのすべてをなぞり、僕は孤独の中に沈んでいく。
中学卒業の日、陽子さんが残した「電話する」という、守られるはずのない約束。
その呪縛に囚われた高校生の僕の隣には、僕のために「陽子さん」を演じ、自らも笑わなくなっていく少女・真梨子がいた。
誰かを想う痛み、傷を移し替えるだけの残酷な会話。
そして、知らされるあまりに静かな訃報。
スマホもSNSもなかった昭和の終わり、あまりにも簡単に繋がりが失われてしまう時代の物語。
(全五話・完結済み)