あらすじ
金木犀の香りが漂う季節、沈若蘅(しん・じゃくこう)は、世俗から切り離された荘厳な宮殿へと足を踏み入れる。
白大理石の門をくぐり、鏡のように磨かれた床を歩む彼女に、老いた教育係(嬷嬷)は「ここが、誰もが羨む極楽であり、お前の帰る場所だ」と告げる。しかし、赤漆の柱や龍涎香の煙に包まれたその場所は、息を呑むほど美しいと同時に、逃れることのできない「静寂の檻」でもあった。
贅を尽くした空間で、若蘅はひっそりと佇む月洞門の先へと進む。そこにあるのは、真の幸福か、あるいはすべてが音もなく消え去る無の世界か。
これは、華やかな宮廷の影で、深い静寂の領域へと導かれていく一人の女性の、孤独と覚醒を描いた物語。