あらすじ
乱世に情は毒だと、誰もが言う。
若き領主アレスの家中にも、一人の厄介者がいた。四十を過ぎた軍略方エルド。声は小さく、呂律は乱れ、問いへの答えが三日後に返ってくることもある。家臣たちは疎み、役立たずと断じた。切るべきだという声は、日を追うごとに強くなっていく。
それでもアレスは、エルドを切らなかった。
同情ではない。この人にはまだ果たせる役目があると、本気で見ていたからだ。
敵軍四千五百。味方千八百。誰の目にも勝ち目のない決戦の日、エルドは初めて戦場の中心に立つ。
理想の主君とは何か。その答えは、勝利の後ではなく、勝利の前からすでに出ていた。