あらすじ
時は1929年。内庁特務――通称「後平家」は、平家の血を引く者として怪異を討つ運命を負っていた。それは先祖が神器「天叢雲剣」と共に壇ノ浦で人水した罪に起因し、後に勅命により、末裔たちが代々各地で発生した怪異を討伐するという罰でもあった。
特務の一員である月城理一は、その理不尽な一族の運命に内心で反発を抱きながらも、黙々と任務を遂行している。対して妹の彩夜は、巫女姫として紅翅蝶を操り、魂を導く役目を自然に受け入れていた。護衛の剣士・隼人とともに、三人は各地で怪異に対峙する。
ケモノの魂を喰らい現世に孵った怪異「野寄」、ケモノと人の魂を喰らい現世に孵った怪異「人羽」――それら各地での怪異との戦いの後、後平家の三人は人の魂のみを喰らい現世に再び孵ってきた名を持つ怪異、平敦盛と対峙する。
須磨の地で現れた平敦盛に対し、彩夜は巫女姫としてその魂を物語として詠い救済を試みるが、理一は人を喰らった怪異として変わらず討つべきだと断じる。
戦いの果て、敦盛の魂は本来在るべきところへと還り、怪異は鎮まる。しかし同時に、殉職した仲間の魂もまた紅い蝶――紅翅蝶へと変じられ、巫女姫である彩夜に回収される。それは救いであると同時に、死してなお続く束縛であり、魂の徴収でもあった。
任務を終えた帰路の列車内。理一は紅翅蝶を「終われない呪い」として忌避するが、彩夜はそれを「死してもなお共に在れる繋がり」として肯定する。相反する価値観の中で、理一はそれを完全には受け入れられないまでも、一つの在り方として理解し始める。
怪異と戦い続け、やがて死を迎え、それでもなお終わらない一族の呪われた紅翅蝶の運命に、ひとつの救いを見いだし、三人は次の地へと向かう。